公開: 2024年5月10日
更新: 2024年5月10日
米国社会の義務教育制度は、基本的に地域の自治に任されていると言えます。財政は、かなりの部分を、学区別の地域税である「教育税」に依存しています。このため、教育に必要な機器や教科書などの購入、教員の人件費の一部は、PTAの提案に基づいた教育税で賄われます。例えば、特別な教育法を導入しようとする場合、校長とPTA委員が提案と予算案を作成し、住民投票にかけるのです。1990年頃の米国社会でも、日本社会と比較して、米国社会の義務教育が遅れているとの認識から、当時、日本社会でも普及していた「公文式教育」を導入すべきではないかとの提言があり、導入した学区がありました。
そのような特殊な教育は、米国社会では一般的ではなかったため、「公文式」教育の専門家を採用する必要があり、そのための予算案をPTAが作成し、住民投票にかけました。このとき、「公文式」教育の専門家とされた米国人教員は、前任校で「公文式教育」を担当し、成果を上げたとの経歴書も付けられていました。このPTA提案は、住民投票で否決されましたが、PTAは、別の方法で予算を確保し、導入を実施しました。
また、同じころ、パーソナル・コンピュータの性能が向上し、価格も安くなっていたため、多くの家庭がパーソナル・コンピュータを購入し始めていました。このような状況から、小学校にもパーソナル・コンピュータを導入し、全児童がそれを利用するようにすべきであると言う提言がなされ、PTAが導入のための計画を立案しました。この提案も、住民投票では否決されましたが、コンピュータ・メーカの援助と、児童たちの親の寄付もあり、50台程度のパーソナル・コンピュータを導入しました。
このように、PTAが必要だと考えている機器や企画に対して、必要な教育税が住民投票で可決しなくても、個人の寄付、企業からの財政援助(寄付)、学校での催しの開催による収入、宝くじの募集など、様々な方法で、臨時の収入を考え、それを機器の購入などに投入することができます。この場合、最も重要なことは、PTAの役員たちの熱意と企画力が、重要になります。それは、その地域に住む人々の豊かさと、知的水準に、強く関係しています。